アルバム・レビュー
TAKE A SHOWER RECORDS
, 2011/11/23
77

東京をベースに活動するオルタナ/ポストパンクバンド、Bossston Cruizing Maniaが無駄にたくさん作品を作っていると責めることなど、誰にもできない。2004年に彼らの3rdアルバム 『コミック/再生/シニシズム』が発売されてから7年以上の月日が経ち、この『Loaded, Lowdead, Rawdead』が発表された。さらに90年代にバンドが結成されてから20年になろうとしている。それにもかかわらず、彼らは東京のアンダーグラウンドライブミュージックシーンの要として一定の地位に納まっている。というわけで、これは“カムバック”ではないのだ。

Bossston Cruizing Maniaは、ジャズ/プログレ/ヒップホップ/オルタナデュオのUhnellysと似たところがある。カシマエスヒロの書く詞はとりとめのないストーリーを描き出し、曲のあちこちに見え隠れしている。しかしUhnellysのKimがマーティン・スコセッシの映画のようなサクサクしたカットを多用したものを好む一方で、カシマが描くストーリーはもっと抽象的でとりとめがない。内容もYouTubeから社会主義、スーパーマリオ、それにデリバリーを雇う…など多岐にわたっていて、日本版Mark E. Smithといったところだ。

初期のZAZEN BOYSで向井秀徳が台詞をわめいていたのにも似ている。Bossston Cruizing ManiaがZAZEN BOYSやNumber Girlよりも古いバンドであることを考えると、向井がカシマに影響を与えたのではなく、その逆なのだろうが。実際、『Loaded, Lowdead, Rawdead』に直接影響を与えているのは、向井ではなく90年代後半に福岡の音楽シーンを賑わせたPANICSMILEの吉田肇だ。

吉田はアルバムをプロデュースし、それが東京への進出となった。そしてBossston Cruizing Maniaと共に90年代後半の東京ミュージックシーンのある一角にコアを形成し、バンド世代に影響を与えた。コアが形成されたのは、だいたい秋葉原クラブ・グッドマン(最初は吉田が、今はカシマが予約を牽引している)や最近ではディスク・ユニオンのTAKE A SHOWER RECORDSだったりする。Bossston Cruizing ManiaやPANICSMILEがいなければ、TACOBONDS(こちらも吉田によるプロデュース)や the morningsなどのバンドはおそらく現在のような形では存在していなかっただろう。

この音楽はブリティッシュ・ポストパンクとアメリカのノーウェーブ、90年代オルタナロックの感性を併せ持ち、日本のロックを形作る考えを明確に持っている。日本のロックは、あぶらだこのような80年代から失望したポストヒッピーの70年代アンダーグラウンドシーンまでをもつなぎ、最終的には初期のパンクシーンと溶け合った。それに、Pere Ubuとも類似点がある。アルバムの前半は特にそうで、例えば "Low Down"の繰り返しを多用したミニマリズムがそうだ。それに「Who is Next」や「Citi Bank」では、Jah WobbleやPublic Image Limitedのようなポップパンクダブの影響が見られるし、 「Go On to Be Child」にはThe Pop Groupのような容赦なく妥協のないファンクパンクの影響が見て取れる。

しかしながら、こういったサウンドは東京のオルタナシーンにがっちりと浸透し、この街の一部になっている。少なくとも70年代のクリーブランドやロンドン、ブリストルからは離れつつある。むしろ流行に敏感なふりをせずに、都会の欲求不満や疎外感、被害妄想が渦巻く東京の中央線沿い周辺のコンクリの会場に新しい家を発見したのだ。

ぎくしゃくした物怖じした感じとリリース作品の少なさで人の裏をかいているが、それでいて容赦がない。だからこそこのアルバムは一息で飲み込みにくい物になっている。PANICSMILEのようなコンテンポラリーなバンドは、実験的で生々しい瞬間の厳しさと、(確かに自嘲的で解体批評主義な)ポップソングの近似値を分割する方法を見つけるだろう。一方で、現在の多くのアンダーグラウンドバンドにとって、25〜30分のミニアルバムは配布メディアの選択肢となっている。

『Loaded, Lowdead, Rawdead』の前作から長い間のギャップがあったことを考えると、ボストン・クルージング・マニアはもっと“消化しやすい”長さのアルバムを何回かリリースした方がいいんじゃないかと不思議に思う人もいる。しかし一方、そしておそらく決定的に、このバンドが理想を追うためには妥協をしない点を尊重しないことは難しいのだ。そしてアルバムの締めくくりとなるのはお祭りのようなハッピーなサウンドの「It's 4AM in Lynch」で、彼らは聴き手を満足させるのだ。

Ian Martin
2012年2月01日